日暮れになると草むらから虫の声が響き、人工音を消して過ごしたい夜がつづいています。
まだ日中が暑い仙台ですが、朝晩は秋らしくなりました。
そろそろどこぞのお庭から金木犀の香りが漂ってくるかな。待ち遠しいです。
店先ではおいしそうな梨が並んで、焼き芋の香りに引き寄せられる時期になり、先月末から始まったせんだい21アンデパンダン展巡り、今月の金木犀、お月見……秋は見て利いて食べて、しみじみ味わう季節ですね。
おはなしの喫茶室の表立った活動は現在お休み。
書きたいものがあり、いろいろ見て歩いたり、本を読んだり、猫をさわったりしながら、書いています。
〈ほんとうの声〉を書きたいというのが、ここ数年の思いです。
それは自分のなかから出てきたものなのか、なにか感じとったものなのか、境界はわからないのですが、書いていると時々、〈だれかの基準〉や〈求められそうな正解〉に寄っていってしまいそうになり、そうするとき、「待って待って、それはほんとう?」と気を改めます。
ほんとうの声を聞いて、書く。
ライフワークとして本をつくる身として、大切にしたい思いです。
ものづくりの理想に、近い作家さんを今年知りました。
図書館通いをしていて見つけた、柚木沙弥郎さんです。
大変有名な型染めの方で、光原社でもその絵を目にしたことはあったはずなのですが、今のタイミングで染め物の本(『柚木沙弥郎の染色 もようと色彩 日本民藝館所蔵作品集』筑摩書房)と出会って心惹かれました。
なににそんなに惹かれるのだろうと考えました。
まず、大好きなパウル・クレーに似た印象があること。
クレーのなにと似ているのかというと、その内側から命がはずんで躍動した形となって、形の繰り返しと配色によってリズムが生まれるところ。
かわいらしい形に、ユーモアや冷静な観察、なにか意図が感じられること、生涯を通した作品づくりに新しいものを生み出そうと挑む姿が見えること。
わたしも内面に命が宿っているものを形作っていきたいなあと思います。