文庫本「緑街」

新しいチャレンジの本をつくりました。
「緑街」という文庫本です。
これまで手製本にこだわっておりまして、長めのお話を本にすることができずにいました。
ですが、どうしても緑街を紙の本にしたくって、この際印刷所の力を借りてしまおう! と踏み切りました。
去年一年かけてIllustratorというものも自己学習したので、ブックデザインもやってみたい!と思ってしまったというのもあります。
だって、そうしたら、本をつくりたいっていう、他のひとのお手伝いもできるようになるかもしれない。
だれかのための本をつくる。
オーダーメイドの本をつくる。
という野望に近づくステップじゃないかなとも思いました。
まずは自分のもので力を試してみないといけませんからね。
ということで、印刷所さんにかけてつくったのが、こちらになります。
ちゃんと、本になってる!
と、いうささやかな喜びです。

本文の構成は、詩篇・序編・本編5章から成ります。
緑街と通称される雨ヶ崎植物研究所という場所が舞台です。
この雨ヶ崎植物研究所は、豆本「雨の商品型録」のいちばん最後に出てきています。
「砂漠に緑を」と謳っている研究所です。
雨の商品型録をお持ちの方がいらしたら、ご覧になってみてくださいね。
この研究所はこんなこともしているのか! 悪の組織か!ということが発覚しますので、お愉しみいただけるのじゃないかと思います。

キイという人物が主人公です。
ほかの住人がすべて自由意志で移住するなか、キイだけは騙されてやってきました。
緑街では、植物の種を植えられた人間が、植物になっていきます。
ひとり、騙されたやってきたキイは、その現実とは思えない現実に押しつぶされそうになります。
そのキイを支えたのが、フウコという女性です。

「夢はからまり、ぶつかりあい、砕け、溶けて、熱く冷たく体内をめぐっていく。万華鏡模様。回転を止めるまで夢は絶えない。人間が植物と化す緑街へ来てからキイは万華鏡の内部に棲む。キイにとってフウコは点だった。一点を凝視することで容赦ない回転に耐えていたのだ」

彼女は月に触れようとしたところで、梅になってしまいます。
キイがフウコを失うところから、物語は始まります。

「どうしてひとはいなくなる時に身体のどこかを持っていってしまうのだろう。いや、フウコはいなくなったのではなく梅になっただけなのに。彼女はキイの肉をひとつ盗んでいった。だから風が通り抜ける。だから寒いのだ。もはや街は春になるばかりなのに」

そうしてキイは身体にできた空洞を見つめていきます。
見つめざるをえないのです。
緑街の住人たちと関わりながら、キイは何度もフウコを思い出し、空洞の形や大きさをなぞります。
キイの空洞はなにかで埋まるのでしょうか。
キイがなにを得るのか、得ないのか。読んでいただけたらうれしいです。

現在MacBookが寿命を迎え、新たなiMacのお迎え待ちのため、2月4日販売予定だったものが、10〜12日の販売開始になりそうです。
今回からは、HPでもお買い求めいただけるよう、準備を整えました。
今まで通り、minneでのご購入もできますが、手数料発生分minneのお値段はややが高くなります。
どちらでもご都合のよろしい方を選んでいただけたらと思います。
販売開始の際に、またご案内させていただきますね。
それではまた。